穏やかな空

初めてを積み重ねてく

朝7時。
君に送った2通のLINEは未読のままだ。

「よしっ」
コートを羽織ってマフラー巻いて、自転車を立ちこぎ。
君の部屋に合鍵で入ると、

「んーーー」
ベッドの中、眉間に皺寄せて苦しそうな健太。
起きているように見えてこれは寝ている。
きっと良くない夢を見ている。
ゆっくりとカーテンを開けて、
「健太」そっとささやく。

本当は今すぐ目を覚まさせてあげたいけれど、できるだけ自然に起きてほしくて。
「健太」
君の頬に柔く触れる。
「さ…く……?」
「おはよ、健太」
少しでも安心してほしくて、健太の髪を撫ぜる。
「ごめ…! わざわざ起こしに来てくれたんだ?!」

「明日LINEで起こしてくれないかな?」
昨日頼まれたんだ。
9時から大事な打ち合わせがあるからって。

「平気。健太こそ大丈夫? 嫌な夢見てたんじゃね?」
「……起きたら夢の記憶があやふやになってきた」
「じゃあよかった」
寝起きでくしゃくしゃの髪。
まだ少しぼんやりした瞳。
可愛いな。愛おしいな。
何より、少し前の君なら、俺に「起こして?」なんて頼らなかった。
胸がくすぐったくて、フワフワする。

今、恋をしている。